8月のメッセージ 「敗戦後70年これからすべきこと」

 私は被爆者の体験証言を伝承し、広島を訪れる子どもたちや大人に語ることをしています。

そのなかで学び深まることは、人間には恐ろしい面とすばらしい面の両方があるということです。

 大量殺りく兵器の原爆はすさまじい熱線と衝撃波という破壊力を持ち、そしてその影響の全貌を

把握できない放射線を放出します。原爆、核兵器は恐ろしい。しかしそれよりも恐ろしいのは人間です。

原爆を作り生きた人間の頭の上に落としたのは人間。自分たちの保身のためにずるずると

負け続ける戦争をいつまでも止めなかったのは人間。それから70年、核兵器を抑止力と位置付け、

あるいは自分の利益を追求するために核兵器を作り続けているのも人間。

私たちは恐ろしい核兵器と人間に直面しています。

 

 「でも」、「しかし」です。被爆者は教えます。人間には恐ろしい面もあるが、

それ以上にすばらしいところがある、原爆も破壊できなかったすばらしいところがある。

それは自分の体験を他の誰にもさせてはならない、人間のいのちは尊い、

そのいのちが守られるためにつらい思い出したくない被爆体験を語り出そう、という

被爆者の他の人間のいのちを守ろうとする気持ちです。

「人間のいのちは大切、自分の身も心も引き裂いた体験を他の誰にもさせてはならない」の

気持ちは被爆者だけではなく、従軍慰安婦をはじめとする多くの戦争体験者の叫びでもあります。

そしてこの叫びは私たちを動かすのです、人間のいのちが暴力・武力でそこなわれてはならない

と共感し、私の場合は自分も被爆者と共に語り出そうと決意して伝承活動を始めたのでした。

原爆も破壊できないものを人間は持っている、人間のいのちは大切であるという思いです。

 「人間のいのちは大切」は私たちみんなが共有できることではないでしょうか。

私たちはこの思いを育て合い、分かち合い、具体的な行動の形にし合い、

そして次の世代に引き継いでいきたいと思います。

 

                  2015年8月26日   石谷牧師記

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