<2024年夏、礼拝説教要旨>
「幸いだ、平和を造り出す者たち、その彼らこそ、神の子と呼ばれるであろうから。マタイ福音書5章9節」ということばがあります。私たちが作れる平和にはどのようなものがあるでしょうか。平和とは、戦争状態の中で生活をしてはいないことを含めて、私たちみなが生きていることを喜びつつ存在できていることです。
[自分と隣人を肯定できるという平和]
私は、先ずはなんといっても、イエスとイエスの福音によって、生きていくことの安心と喜びを得ていると思います。欠けあり足らざるあり誤りある私が、無条件の赦しと招きという底抜けのインマヌエルを今日も明日も享受できる、そして他の人間も同様・同質、私の平和の源泉、屋台骨です。
さらには、ありがたいことに、平和は隣人からも社会からも与えられている・備えられているものであり、同時に私も隣人と共に作り出していけるものです。私は自分が作れる平和を次のように二つに分けて作ろうとしています。
[私が毎日作ることのできる平和]
・先ずは、イエスに倣って祈ることです。ある方のことを思い起しそのすこやかに暮らしていることを願います。私の周りで、社会と世界の各地で生存していくことに困難を抱えている人たちを思い起こします、そして自分にできることを探し試みます。
・次に、マタイ福音書25章35、36節にあるような、隣人への行動です。助け、なぐさめ、励ましを必要としている方のところへ身を運び、言葉を届けます。直接その方のところに行けなくても、祈ります。祈りは届けられることでしょう。
・家族、そして教会の仲間たちと友人との間に築くことのできている、有難く、得難く、心から感謝している関係を大切にしていきます。ねぎらい、励ましなぐさめ、感謝し、共に労苦する行動を今日も共にしていきます。加えて教会の集いをはじめとして、みなが自由に語らい楽しみ、生きることの喜怒哀楽を分かち合える場を、みなさんと協力して作り続けることも平和作りです。
世界各地から、日本社会の中から、人間の暴力によって武力によって言葉の暴力によって、命と人権・尊厳を奪われている人たちの叫びの声が届きます。核兵器を使うぞという脅しもあります。私は落胆します、胸が痛みます。しかし、それで何もできなくなるわけではありません。
[私が次世代につなげていく平和作りー命・人権・尊厳こそ宝を実現させるー]
・私の場合は、たとえば次のことです。1945年8月から、79年たっても核兵器は廃絶されていません。2021年に50ケ国によって批准されて発効している核兵器禁止条約の、2024年1月現在の署名国は93ケ国、批准国は70ケ国。この数に励まされつつも、なお核兵器廃絶の道険しです。これほどに、核兵器を保有している国とわが国日本を含めて核の傘に入っている国にとって、核兵器を廃絶することは容易でないのです。この現実を見続けつつ、私は被爆者の被爆体験とその願い・祈りを、被爆体験伝承者として語り続けます。
・さらに私は、太平洋戦争とはどういう戦争であったかを学び知り、繰り返してならないことについて深めながら生活をしていくことを始めました。まだまだ緒に就いたばかりなのですが、70歳を目前にするまで生きてきて、自分の見聞と体験から、明治から1945年までの、とりわけ太平洋戦争を省みることを、現在(いま)・ここで始めそして続けながら深めながら、周りの人へ広げながら、生活していくことが、戦争の起こることを未然に防ぎ、ちからの行使・暴力がまかりとおることのない日本社会を作っていくことに大きく繋がっていくと考えるようになったからです。私はこの生き方も次世代につなげたいと考えます。先ずは私から始めます。
・マタイ福音書5章44節に、「しかし、この私はあなたたちに言う、あなたたちの敵を愛せ、そしてあなたたちを迫害する者らのために祈れ。それは、あなたたちが、天におられるあなたたちの父の子らと成るためだ。なぜならば父は、悪人たちの上にも善人たちの上にも彼の太陽を上らせ、義なる者たちの上にも不義なる者たちの上にも雨を降らせて下さるからだ。」とあります。
隣人を、実のところは自分の利益と都合にとってであるにも関わらず、あたかも普遍的に、悪人、善人、義人、不義なる者と差別、類別、言葉でおとしめるヘイトスピーチをしてしまうこころねを持つ私です。しかし、この世界に日本社会に、敵という人間はいないのだ、無関心になってもよいという人間はいないのだ、そうなるのなら痛みを覚える、私たち人間はみんな隣人である、というスピリットになんとか立ち返っていきたいと願っています。このスピリットを次世代につないでいくこと、これも次世代につなぐ私の平和作りです。
[心身のすこやかさと経済的見通しを保持する]
だからこそ、今述べた二つの平和作りを実現していくことのできる私であるように、私は心身のすこやかさと体調を維持すること、加えて安心できる経済基盤を持って暮らすに努めます。
この文章を読んでくださるみなさんが、ご自分の平和作りを、[私が毎日作ることのできる平和]と[私が次世代につなげていく平和作り]に分けられるのならば、どんなことになるでしょうか。各人の平和作りを、ひとつのテーブルの上に出し合ってみると楽しいでしょうね、心強い気持ちになるでしょうね、ぜひ一度このテーブルを作ってみましょう。
以上